電化製品等の使用感を書く。
イドリス・アベルカンの「フランスの天才学者が教える脳の秘密」を読んだ。
駄作だった。
駄作の中の駄作。
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著者:イドリス・アベルカン
翻訳者:広野和美(ひろの・かずみ)
出版社:TAC出版(TAC株式会社出版事業部)
平成30年12月14日初版第1刷
原書の題名:
「Libérez votre cerveau !」(脳を解き放て!)
原書の副題:
「Traité de neurosagesse pour changer l'école et la société」
(学校と社会を変えるための「知恵ある神経科学」概論)
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本書の主眼は、学校と社会を変えよ、という提案。
本書には、いくつか暗黙の前提がある。 例えば、子供は元々勉強熱心であり、既存のシステムが妨げなければ子供は勝手に学ぶはずだ、という前提。 学校の授業にゲームを取り入れるには、具体的にはどうすればいいのか、一切書かれていない。子供が勝手に考えてくれるわけではない。 子供は歯磨きを嫌がる。不快な感覚を伴うものは、遊ばせていれば勝手に覚えるわけではない。
基本的に神経科学の本ではない。
著者は、秀才たちの発言・逸話・学説を大量に引用することで、自らを天才に見せかけようとしている。 自分を大きく見せる宣伝の天才ではある。
結論が凡庸。学校から強制をなくして、生徒を伸ばせば、皆特別な人間になれる、というもの。 脳を解き放つための具体的な手法は語られずに終わる。
万能で博識な「知の巨人」が難しい科学技術を分かりやすく教えます、という本には怪しいものが多く、警戒が必要。
「神経−なんちゃら」という用語を発明して、ごちゃごちゃ捏ねくり回すだけ。
néologisme・・・造語症、奇を衒った新語を使う、新語好き。
「neurosagesse」は著者の造語で、中身のない用語。
フランス語版第4章心の体操
1) Pratiquer la subjectivité limpide.
・・純真な主観に従う
2) Sachez désinstaller une application
・・アプリケーションをアンインストールする
3) Passer de l'impuissance apprise à la puissance apprise
・・"やってもできない"を"やればできる"に変える
4) Soyez un néophile délibéré
・・"新しいもの好き"になる
5) Pratiquez l'exploration, ou l'art de la flexibilité mentale
・・心を柔軟にするコツを身につける
6) Pratiquez la méthode des lieux (une méthode de mnémotechnie)
・・"記憶の宮殿"を建てる
7) Ignorez vos pairs
・・周囲の言葉を気にしない
いづれの節にも、具体的なやり方は書いてない。
帯にもある「"やってもできない"を"やればできる"に変える」の部分は酷い。8行で説明が書いてあるのだが、なぜ「やってもできない」と思ってしまうのかを述べた文章だけで8行のほとんどを使ってしまう。8行の中の1文だけが「やればできる」に関係する情報で、引用すると「だがあきらめてはいけない。」とのこと。これ以上の情報は全く書かれていない。
下らないエピソードをだらだら並べただけの最低な本だった。
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140頁、「〜、知恵ある人とは体制など無用の長物だと証明する者のことだ。体制は人間のエゴの集まりにすぎない。」
大橋弘祐氏の「サバイバル・ウェディング2 わたし、ひとりで生きていけますが結婚しないとダメですか!?」を読んだ。以下はメモ。
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著者:大橋弘祐(おおはし・こうすけ)
題名:「サバイバル・ウェディング2 わたし、ひとりで生きていけますが結婚しないとダメですか!?」
出版社:文響社
平成30年8月7日第1刷発行
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35歳キャリアウーマンの婚活小説。あんまり面白くなかった。
・ブランド名を連呼。ブランドのウンチクで話が進む。
・主人公は上司の要求に振り回される。
・主人公の股が緩すぎる。
・この手の小説にはよくあることだが、とりあえずゲイのキャラクターが登場する。
・憧れのニューヨーク。自由で進んでいるニューヨーク。公園の浮浪者にも悲壮感がないニューヨーク。シングル・マザーにも優しいニューヨーク。
・東村アキコの「タラレバ娘」などで見たような展開が多く、先が読めてしまうこと度々。
・結婚できない女を見て安心する小説?
・主人公は自分の現状をとにかく肯定する。現状肯定に始まり、現状肯定に終わる。
・商品の質では差別化できないブランド品。誰がどうやって価値を決めているのか。ブランドに纏わる蘊蓄を使いながら物語が進んでいくにもかかわらず、「誰かが作った価値観」で生きるのはやめるように勧めてくる。
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8頁、麻衣子は韓国旅行で美容液を買ってきた。
27頁、「結婚こそが女の幸せという、一方的な圧力をやめてほしい。」
30頁、麻衣子は、ニューヨークの本社へ転勤したら、世界中どこにいても服が買えるオンライン事業を始めたい。
184頁、麻衣子は、結婚しても生活レベルを下げたくない。
208頁、ジミーチュウの戦略。「〜、商品力だけで差別化するのは難しい。」
★ブランド品を売るには宣伝が大切。
★小説家にブランド名を連呼させると…。
238頁、「「自分の幸せは自分で決めないとだめよ」」
279〜284頁、人を好きになることよりも夢を掴むことが大切。
295頁、「〜、当時の会社というところは、今よりもさらに封建的だった。」
★会社が「封建的」であるとは、どういうことか。
310頁、「「〜。自分の幸せは自分で考え、自分で選ぶ。〜」」
312頁、他人の作った価値観で生きるのはやめろ。
327頁、「「部長、まだ結婚なんて言ってるんですか。時代遅れですよ」」
327頁、「「ニューヨークの女は自立してるから、結婚相手じゃなくて人生を一緒に楽しむパートナーを探すんですよ。〜」」
★結婚が時代遅れとなる時代は来るのか?
小松正之氏の「築地から豊洲へ 世界最大市場の歴史と将来」を読んだ。以下はそのときのメモ。
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監修者:伊藤裕康
著者:小松正之
出版社:株式会社マガジンランド
平成30年11月21日第1刷
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築地の歴史、卸売市場の仕組み、豊洲市場の長所短所、日本の水産業の問題などが書かれていて、面白かった。
海外の類似の市場がどうなっているのか、詳しく書いてあった。海外の市場は資源の管理やインターネット入札などで日本より進んでいるようだ。インターネット入札は、商品に関する画像情報、数値情報、文字情報等を整備しないと実現できないらしい。
テレビ・新聞の伝えない情報がたくさん載っており、読み応えがあった。
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5頁、「小松さんから、日本橋時代から築地を経て豊洲に移転するまでの市場の歴史、および市場流通と卸売市場の在り方についての包括的な本を出したい、ついてはこの本の監修を引き受けてほしいという依頼があったのは、二〇一六年の春でした。」
★改正市場法の成立
5頁、平成30年6月、「卸売市場法及び食品流通構造改善促進法の一部を改正する法律案」(改正市場法案)が国会で成立し、卸売市場の開設が、国や自治体による「認可制」から、高い公共性を有する市場であると行政が認めれば民間でも参入可能な「認定制」へ移行する。
5頁、「今回の法改正は、安倍政権の規制改革推進会議での「卸売市場は時代遅れ、市場法という特別の法に基づく規制は撤廃すべき」という意見からスタートしています。」
5頁、6頁、「しかし、認可制を廃止して認定制にするという方針は、二〇一七年一一月に農林水産省から突如示されたもので、与党内では十分な議論がなされないまま、法案は可決されました。」
★問い
24頁、25頁、市場外流通が伸びてきている昨今、公設の卸売市場である築地市場、及び築地の延長上にある豊洲市場は必要なのか。
★著者による纏め。
25頁、「本書は、日本橋に始まる築地市場のルーツから、八十有余年にわたる築地の諸相、そして豊洲市場への道のりと今後の展開を時間軸に沿って述べていくとともに、私の専門分野である漁業・水産業と海洋生態系を入れた大局的視点と今後の在り方にも言及する。また、これまでの類書にはなかった中央卸売市場の構成と機能、市場を支える財政、市場外流通、海外市場の情況に加えて、中央卸売市場の将来展望まで言及しており、この一冊で豊洲市場のみならず中央卸売市場について幅広く理解が可能な構成となっている。さらには、築地市場の卸売会社全一〇社をはじめ、仲卸業者、売買参加者、関連業者の方々の生の声もお届けすることで血の通った読み物になったと思う。」
☆実際、25頁に書かれている通りの本だった。
54頁、55頁、原爆実験による風評被害について。
★大規模漁業の排除
198頁、「〜。また、戦後の漁業法の改正では、明治時代の漁業法の根本を維持したままで民主化の考えが導入され、小規模漁業者が大規模な漁業を排除し、そして小規模な漁民間の平等と公平を達成することを目的としている。それでは悪化した資源と衰退した漁業の回復と再生は到底おぼつかない。」
★水産庁の予算は、土木事業中心の公共事業のものが多い
200頁、「その他の提言では予算の組み方にも言及している。水産庁の予算は漁港の建設などいまだに土木事業中心の公共事業に偏重している。これは漁船も漁業者も減少しているのに不必要なものが多い。また、全国各地の漁港や東日本大震災の被災地では防災を大義名分として、日々の生活と自然の機能(酸素、水、および食料の供給)を忘れ、大きな堤防を建設した。これらは水産業・漁業にとっても重要な沿岸域の生物、稚魚と海藻の育成の現場を破壊し喪失させたのである。このような公共事業の偏重から、科学調査の実施に必要な予算や国民への情報提供ならびに教育に必要な予算に組み替えるべきである。」