電化製品等の使用感を書く。
河野裕の「昨日星を探した言い訳」を読んだ。
つまらなかった。
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題名:「昨日星を探した言い訳」
著者:河野裕
出版社:株式会社KADOKAWA
2020年8月24日
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山田詠美の「僕は勉強ができない」に似ている。
(敵・身方の区別があり、敵は愚かで身方は賢くてカッコいいという設定である。にもかかわらず、身方の理屈や言い分がアホらしい。)
吉野源三郎の「君たちはどう生きるか」にも似ている。
(人類の進歩の方向は決まっており、主人公らはその方向を知っている。そして、進歩の速度を上げるためなら好きなだけ暴力を用いて良いという価値観。)
道徳的優位に憑って道徳的劣位を視れば、勢い竹を劈くが如し。
(主人公らは、飲食店の店員の小さな失敗につけこんで怒鳴り散らしているクレーマーによく似ている。)
お馬鹿キャラクターが数名登場し、主人公らはイジメを存分に楽しむ。
(弱い敵を一方的に痛めつける正義のヒーローはダサい。頭の悪い敵を一方的に欺いて悦に入る天才キャラはアホっぽく見える。道化役を相手にネチネチ文句を言ってる道徳戦士はウザい。)
いろんな価値観に配慮しているかのような「言い訳」的な台詞が多いものの、よく読むと結論は独善的であることがほとんど。
(「〜〜であるべきだ」という押し付けが多い。権利の有無は男主人公が決める。選民思想の匂いがする。)
世界が主人公に優しい。主人公らの言行不一致は凄まじいが、誰も主人公らがおかしいとツッコまない。主人公を批判するのは主人公だけ。
(ちょこっと反省して終わり。)
他人に厳しく、自分に甘い。
(他人を罵倒して虐めた後、自分にもおかしいところがあるなぁと軽く反省して終わり。他人の感情は理屈で否定するが、自分の感情を否定することは許さない。)
あまりにも言行の不一致が酷いので、実現したい夢があるから権力獲得を目指しているのではなくて、権力に拠って人を虐めるのが好きなので敢えて「実現したい夢」を創り出したように見える。
女主人公は嘘吐き。他人が何を言ったかなど、確認されるとあっさりバレるような嘘を平気でつく。
格付け、序列、席順の話が多すぎて気持ち悪い。平等仮面は、実質的に身分として機能する序列を愛しているようだ。
女主人公の恋心が偽物っぽい。
(なろう小説などの主人公ヨイショと同程度の品質。)
小説として細部の作りが甘い。
(仲が悪いふりをしている二人が校舎の前で待ち合わせをしたり、普通にデートしてたりする。時間や場所に気を使っているようだが、バレるだろうと思ってしまう。)
現実の記述が「悲惨」「不道徳」に見えるようだ。
(動物の習性の記述など。)
重要な課題を提示しておきながら、大した考察は行わない。
(「人類が本当に優れた倫理観に基づいた生活を維持するには、充分に発展した文明が必要なのだ」(412頁)。男主人公は逃走。女主人公の男主人公に対する熱い想いさえあれば課題は解決されたも同然、といった感じで終わる。)
宗教っぽい。
(ユダの福音書は存在してはいけないみたいな。)
「感情を根拠としない、客観的な倫理は存在するか」といった話が出てくるものの、議論は深まらない。
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★男主人公(坂口孝文)の保身がウザい
坂口は、ある学校行事の際に橋本先生が車椅子の友人(綿貫)に対してとった行動が気に入らず、それ以来歴史(橋本先生が教えている)の試験は白紙で提出している。
134頁〜141頁にかけて、坂口はその件について橋本先生と話しあうために生徒指導室へ向かう。
坂口と橋本先生の話し合いの場面は、出来が悪いし面白くもない。
その理由は次の通り。
(1)橋本先生をあり得ないほど愚かな人間にしてしまった。
・・・そのように創ってしまった。
(2)坂口の言っていることや考えていることに矛盾がある。
・・・物語が進むと反省文が登場。公平を装う。
(3)坂口が説得よりも保身に走っている。
・・・自分の「道徳的立場」に隙が生じないよう、予防線を張るのに忙しい。
135頁、坂口の台詞、
「あれを、綿貫のことにしちゃいけないんです。そうしてしまうと、僕に怒る権利はなくなってしまうから。こんな風に、僕が自由に怒っちゃいけないことになってしまうから。これはあくまで、僕と橋本先生の問題なんです」
136頁、坂口の台詞、
「だから、権利ですよ。僕は僕以外のために怒っちゃいけないんです。相手が望んでいないなら。綿貫は、自分のために誰かが怒ることなんて望まない。わかりますか?」
136頁137頁、坂口の思考、
とても気持ちが悪かった。綿貫の感情を代弁するようなこと、本当はしたくはないんだ。僕とあいつの関係は、こんな風ではないはずなんだ。
141頁、坂口の思考、橋本先生に向かって、
わかるだろ。わかれよ。強がっていたのかもしれない。傷ついていたのかもしれない。でもあいつは笑って、そんなことが言える奴なんだよ。
★坂口はなぜ白紙でテストを提出するのか
159頁より、
テストを白紙で出すなんてこと、正しいやり方じゃないんだって知っている。問題を――僕が問題だと思っていることを風化させたくなくて、本質には関係ないところで我儘を言っている。それで多少なりとも橋本先生に迷惑がかかれば良いという仄暗い狙いもある。
結局、嫌がらせが目的なのか。
★他人に厳しく、自分に甘く
201頁から、坂口は女主人公(茅森良子)を嫌っている桜井真琴に文句を言う。
坂口の台詞。
「君が茅森を嫌うのは、別に良いんだ。君の友達が、君に味方するのもかまわない」(201頁)
「嫌うにしても、やり方があるだろ」(201頁)
僕は小声でぼそぼそと答える。
「いくら相手が嫌いでも、こっちが悪者になって良い理由はないだろ」
〜(略)〜。ひとりの少女が嫌いで、彼女と関わりたくないのは仕方ない。でも胸の中で嫌うのと、攻撃のために悪意をむき出しにするのでは話が違う。
(201頁)
これは坂口が橋本先生にやっていたことそのもの。
202頁より、坂口の心情、
――悪意を上手く抑えられないのは、僕も同じなんだ。
歴史のテストを白紙で提出し続けているのだから。
なんだか恥ずかしくて、頬が熱くなるのを感じていた。
自分も同じ過ちを犯しているのに、桜井を罵倒したことについて「恥ずかしくて〜」以外の反省は無い。
★倫理・道徳の話をするために登場人物が不可解な行動をさせられている
暗い夜道を歩くイベントに車椅子でコッソリ参加している綿貫条吾。
綿貫が交通事故に巻き込まれることを恐れて教師に連絡しようとする茅森と、綿貫の好きにさせてやろうとする坂口と、二人で色々話しあう。
しかし、価値観云々よりも、綿貫が何も告げなかったのが最大の問題であるように思われる。
茅森と坂口の会話。
230頁231頁より、
「なんの用意もなく、車椅子で拝望会を歩けるわけがない」
「それは綿貫が決めることだ。あいつは君よりずっと、自分の体に詳しい」
「でも学校のイベントで、危ないことはさせられない」
「知ったことじゃない。あいつには、あいつの価値観がある。それを頭ごなしに否定しないのが、君が目指す平等じゃないのか」
「その言い方は、卑怯だ」
〜(略)〜
「綿貫くんが拝望会に参加したいなら、私だって手を貸せた」
〜(略)〜
「それが、嫌だったんだろ。我儘の内容を、押しつけられるようなことが」
「手助けが我儘?」
「そうじゃない。なんていえばいいのかな。綿貫の我儘を、周りが決めるなってことなんだ。(略)」
★自分は理屈を使うけれども、他人が理屈を使うのは許せない
397頁、坂口の台詞、
「どうして理屈がいるんですか。こんなことに」
★恋愛禁止?
私はもうしばらく、坂口と恋人になるつもりはなかった。制道院では、生徒間での恋愛が禁止されているから。そんなことで評価を下げるのは馬鹿馬鹿しい、というのが私の本来の姿勢だった。
馬鹿か?
★宗教っぽい
414頁、「良い先生」である中川麻衣の台詞、
「脚本を初めて読んだとき、こんなものがあってはいけないんだと思った。(略)」
「理想」に思考を乗っ取られている。
1. 無題